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萌える新緑に思う

萌える新緑に思う_d0132664_1433143.jpg 今年も新しい季節がめぐって来ました。この盆地を囲む山々に生き生きと新緑が萌え、張られたばかりの田んぼの水がその美しい山々の姿を映しこんでいます。何十年も都会で暮らしていたものですから、毎年毎年繰り広げられる、四季の移ろいと農耕の営みとの調和が生み出す壮大な光景に、ただ「すごいなあ」と口をあんぐりあけて見とれるばかりです。いつまでもいつまでもこうあり続けて欲しいと願う日本の原風景です。
 しかしよく見ると、耕されずに放置された田んぼも少なくありません。それに、子供の頃に比べ黄砂も多くなったように思います。現実はなかなか厳しいものがあるようです。
 私は昭和35年に、町の中心部から10Kmほど離れた日貫(ひぬい)という辺鄙な集落の小学校を卒業しましたが、当時は300人以上の在校生がおりました。同級生は62人で、2クラスに分かれていたのです。チャンバラごっこなどで山野を駆け回って遊んでいましたから、谷あいの集落には子供たちの歓声がこだまして、朝早くから日が落ちるまで、それはにぎやかなものでした。今はといえば、全校生徒数25名だそうで、この集落もひっそり閑としたものです。ヒト、モノ、カネが都会へ都会へと流れ続けて数十年、このままでは日本の田舎には本当にヒトがいなくなってしまいそうです。
 これまで、わが国はもちろん、ほとんどすべての国々において「右肩上がりの経済成長」を最大の価値とする舵取りが行われてきました。その結果、環境破壊、地球温暖化の危機がもたらされました。そして今、世界はパラダイムの大転換期にさしかかっているように思われます。国民総生産(GNP)ではなく国民総幸福量(GNH)を国政の根幹におくブータン王国が注目され、米国では温暖化防止や核軍縮を高らかに謳う大統領が誕生するなどはそのことを象徴しています。
 わが国でも、「聖域無き行財政改革」の方針が反省され、医療、福祉、教育などを聖域として建て直し、第一次産業を重視する方向へと政策転換がなされようとしています。遅きに失したきらいはあるものの、歓迎すべき流れであると思います。田舎の復権、第一次産業の再興にこそ、わが国の将来があるのではないでしょうか。
 公立邑智病院は邑智郡民の皆様とともにあります。元気な邑智郡がさらに元気であるために、そして日本中の田舎に元気がもどるその日を夢見て、職員一同頑張りたいと思います。引き続きご支援をよろしくお願いいたします。
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         田植えを終えたばかりのたんぼ(邑南町内)[撮影者:松島千晶]
by ohchi-ishihara | 2009-05-08 14:38 | 徒然なるままに

石原晋 名誉院長のブログ


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