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明りは見えるか?

トランプ氏の当選について日本病院会から寄稿依頼があり、一文したためました
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「日本病院会ニュース第959号」

明りは見えるか?
公立邑智病院名誉院長
日本病院会島根県支部長 
                    石原 晋

トランプ氏が次期米国大統領に就任することで、今後の米国が、日米関係が、世界情勢がどのように変化してゆくかは、不確実であるから論じる意味がない。それよりも、このたびの選挙結果が物語る今日の時代状況について考察したい。
 選挙結果は、これまで米国が主導してきたグローバル資本主義と、それがもたらした様々な負の事象(グローバルリスク)への大衆的反逆であろう。貧富格差の拡大、地球温暖化に伴う水/食糧危機、投機的金融の暴走(ヘッジファンド)、大規模な難民問題など、現代世界を覆う暗雲の背景にグローバル資本主義の拡大があるからだ。
 この反逆は、英国のEU離脱や、フランス、ドイツなどにおけるナショナリズムの急速な台頭と同期しており、グローバル資本主義に対する「NO!」が世界的風潮となりつつあることを示しているようだ。
 グローバル資本主義を支えた理論的支柱は国際分業論(比較優位理論)とトリクルダウン仮説であった。グローバル企業が利益を極大化できるよう、国内規制を緩和し、国際貿易障壁を取り除き、資本の国際移動を容易にし、その結果グローバル企業が大儲けすれば、その富が回りまわって下々に滴り落ちてくる・・・という支柱理論は実は大嘘であった。勝ち組の富は滴り落ちはしない、勝ち組は勝ち逃げする、ということがばれてしまった。そのことの帰結が今回の選挙結果であろう。
グローバル資本主義の進展に伴い、国民国家の独立性が次第に損なわれ、多くの先進国において国政がグローバル企業の走狗に成り果ててしまった。TPPなどいったい誰のためのものなのか。敬愛してやまない経済学者、故下村治(池田勇人内閣顧問)は著書のなかでこう述べている。「国の経済の仕事は、この国土に住む1億2千万人にどう仕事を確保し、どう食べさせるかである。そのために必要なら、保護貿易主義もやむを得ない」。それぞれの国家にとって自国民の生活が第一というのはあたりまえのことだ。我が国の官邸周辺もそうお考えであろうと信じたい。さらに、トランプ氏にはなにも期待しないが、トランプの勝利をもたらした時代状況には、次の時代を予感させるいくばくかの明りを探せるようにも思うのである。
by ohchi-ishihara | 2016-12-12 13:48 | 医療時事

石原晋 名誉院長のブログ


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